手に入れる女
優香と駅で別れた佐藤は、そそくさと家に帰った。
とにかく食事はしたし、もうこれ以上深入りするのは絶対にやめよう、と佐藤は心に誓った。
彼女と過ごす一時は愉快だったが、何かの拍子にそれが情事に変わってしまうだろう、という危うさもよく自覚していた。
おまけに、優香は何のためらいもなく堂々と迫ってくるから始末が悪い。しかも、気がつけば優香のペースに乗せられている。
これ以上は危ない。面倒なことにならないうちに手を引くべきだろう。
「ただいま」
キッチンの奥から美智子の声が聞こえて来た。
「お帰り〜。ご飯食べる?」
「食べて来た」
リビングに入りながら返事をすると、美智子は、おや、という顔をした。
「あれ、何か機嫌いいね? 何食べて来たの?」
優香のことをあれこれ悩んで気をもんでいるというのに、機嫌がいいと言われてちょっと心外だった。
「うん、魚とか。ホラ、この前美智子と行ったところ」
いつものように何気なく答えた後、優香の顔が佐藤の脳裏にちらついた。
「あ、あそこね〜、へー、誰と行ったの?」