手に入れる女

「あたしは、ハワイとかに住むのもいいと思うけど。
年取ったら気候のいいところがいいって言うじゃない?」
「そうなの?オレはてっきり美智子は都内がいいとばかり思ってた。
ハワイにいったら、そうそう孫に会えないぞ」

「そうねぇ、そこまで考えなかった。孫か〜、私たちもじきおじいちゃんとおばあちゃんになっちゃうのねぇ」
「もうちょっと先のことだと思うけど」

佐藤は、美智子とこのまま連れ添って老後を迎えるのだろうかと漠然と考える。

圭太が就職し家をでた。聡子もあと2年で大学を卒業する。
子供たちは独立し、二人今の家に残されるのだと思うと何とも言えない感慨に襲われた。



義父たちが入居する鎌倉のマンションは海の見える高台にあった。
近くにはスーパーやちょっとした店が並び、生活するには便利そうな場所である。

中に入ると、広いロビーには座り心地の良さそうなソファがいくつか置いてあり、贅沢な調度品もセンスよく配置されていた。
ちょっとしたカフェも併設されており、一見するとホテルのような設備だ。

受付には24時間人が待機しており、夜中の緊急事態にも対応してもらえるようだった。
来客用の駐車場も充実していたし、ゲストハウスも備え付けられている。

なかなか快適そうな第二のすみかのようであった。

< 149 / 216 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop