手に入れる女
4人は早速新しい部屋に入って行った。
荷物はまだ運び込まれていなかったが、新しくて綺麗な新居は見るからに住み心地がよさそうだった。
じきに圭太が荷物と一緒に到着するだろう。
美智子は丈母と他の部屋をはしゃぎながら見て回っており、佐藤は岳父とリビングに取り残された。
「それにしても急に引っ越しなんて、思い切ったことしましたね」
佐藤は手持ち無沙汰になって、哲郎に話をふった。佐藤は実直でさっぱりとした気性の哲郎が嫌いではない。
「動けるうちに、と思ってね。母さんがすごく来たがってたしな。アイツはもともとこの辺で育ってるから」
「そうでした。お義母さんの地元でしたね」
「むかーしなぁ、母さんを泣かせたことがあってなー、罪滅ぼしってこともあるのかな」
意外な話を告白してこようとする岳父に、佐藤は驚いて聞いた。
「お義父さん、何やったんですか」
哲郎は、コレ、と言って小指を差し出した。
佐藤は、岳父にそんな過去があろうとは思いもしなかった。
佐藤には、哲郎が外で女を作ったりするようなタイプには見えなかった。哲郎は昔のことを思い出すように、しみじみと語り出した。