手に入れる女
その夜、優香は圭太にやさしく抱きしめられ一緒のベッドにもぐり込んだ。
優香は泣き止まない。
圭太は、ベッドの中でもずっと優香の背中をさすっていた。
「ほら、もう泣き止んでよ」
圭太は、太い指でそっと優香の涙を拭う。
ああ……最初に会った時もこうやって慰めてくれたな……
優香はぼんやりと思い出した。
じんわりと伝わってくる圭太の体温が心地よい。安心したら疲れがどっと出たのか、そのまま意識が薄れて行った。
朝早くベッドの中で目を覚ました優香は、鏡に映った自分の顔がひどくむくんでいることに気づいたが、泣きたいだけ泣いてぐっすり眠ったせいか、気分は悪くなかった。
圭太は優香の顔をまじまじと見つめていた。
「ひどい顔だなー、優香さん。昨日は随分泣いてたもんね」
頭をなでながら、やさしく笑って、昨晩あんなに泣いてた理由を聞かない圭太はやっぱり優しい人なんだな、と優香は思う。
それなのにどうして私は……
優香は自分の腹黒い心の内を覗いてぞっとする。
「コーヒー飲む?」
圭太はコーヒーを淹れにキッチンへ立った。
コーヒーの香りは、いつでも優香の気持ちを鎮める。ささくれだった気持ちが少しだけ和らいだ。