手に入れる女
「はい?」
急に話しかけられて当惑したのだろう。佐藤は笑いながらもう一度ゆっくりと繰り返した。
「うん、ちょっと怒ってみてくれる?」
「はあ……」
当惑しながらも、ユカちゃんはぷっと顔を膨らませた。
媚びるような拗ねたような顔だった。山下はユカちゃんの顔を見て鼻の下を伸ばしている。
「その顔で何人の男を泣かしてきたんだろうね〜」
「私がいつも泣いてるんです、雄介さんが来てくれないから」
コケティッシュな顔をみせて、ユカちゃんは、山下と佐藤の水割りを作っている。
佐藤が気付く前に、水滴をグラスの水滴を拭き取り、空になる前におかわりをかいがいしく作る。
自分の分を作るときも、遠慮しいしい山下に聞いている。
山下が上機嫌でユカちゃんと何度目かの乾杯をしていた時、
佐藤は、一度だけの食事で、優香が全くのマイペースで酒を飲んでいた事を思い出した。
彼女にはとうていユカちゃんのような気遣いはできないであろう。
佐藤が驚く程の健啖家だった優香は、遠慮なくてらいなく飲み食いしていた。佐藤は、堂々と、自分のペースで飲むのだと言いきって満面の笑みを浮かべていた優香の顔を思い出した。
あの突き抜けた自信は、端で見ていて本当に気持ちが良かった。