手に入れる女
優香が強い目を持った女だったこと。
強情で、すぐにカッカと怒ること。かと思うと、次の瞬間には大口をあけて大笑いすること。
全身で怒りを表している時の横顔がとても美しいこと。
まっすぐ自分の目を睨みつけて「好きだ」と言うような女であること。
話を始めたら、堰を切ったように滔々と優香のことを語っていた。
いろんな表情の優香が次々と佐藤の頭に思い浮かぶ。
「ホント、大丈夫なのか? 断ち切れるのか?」
黙って佐藤の話を聞いていた山本が呟いた。
「その、小泉さんって人、そんなに想われて……なんか羨ましいです」
ユカちゃんはほーっとため息をついた。
口も挟まず黙って話を聞いてくれた二人をチラリと見て佐藤は照れたように笑う。
「ごめん。年がいもなくおかしいね。今の話、忘れてくれる? オレも忘れるからさ」
「……忘れられるのか?」
「忘れた方がいいことだから……」
佐藤は、ウィスキーを飲もうとグラスを取り上げて空だったことに気づいた。
ユカちゃんが、その夜初めてグラスにウィスキーを注ぎ足しておくのを忘れたみたいだった。