手に入れる女
玄関のチャイムの音がして、佐藤が立っているのを見た時、優香はさして驚かなかった。
「入っていい?」
それだけ言うと優香の返事を待たずに佐藤は中に入ってきた。
「いきなりどうしたの。」
佐藤を招き入れながら優香は聞いた。それは、優香らしくなく冷淡な口調だった。
「ん…、ケータイの番号とか全部削除しちゃったから、君に会うにはここに来るしかないと思って。」
カウチに座りながら説明した。佐藤は言い訳みたいな説明だと思った。
ふっと息をついて、部屋を眺める。
「相変わらず奇麗にしてるね、全然散らかってない。」
それだけ言うと無言になった。なかなか話を切り出す事ができない。
「なーに、部屋をチェックしにわざわざ来たの?」
優香は少しおどけたような顔をして、佐藤の返事を待った。優香の方から、話を向ける気はないらしい。
どうしようかしばらく考えあぐねている様子だったが、優香が黙って佐藤を促しているので、ついに観念したように自分の手に視線を落として白状した。
「心臓が止まるかと思った、この前君たちを見たとき。いつから知ってたの?」
「うーん、だいぶ前かな。」
佐藤は苦笑いをするしかなかった。
「君の方がずっと上手だったってわけだ。素知らぬ顔して僕や圭太と会ってたってことか。」
「まあね。」
優香は余裕たっぷりの返事をした。