手に入れる女

佐藤はカウチに体を投げ出した。放心したように呆然と座っている。
二人とも言葉はなかった。

優香は佐藤のところにゆっくり近づいていった。
佐藤の上に馬乗りになって、両膝を佐藤の脚にまたがせカウチの上についた。
全てがスローモーションのようにゆっくりと動き、何も聞こえなくなった。
ただ、佐藤の心臓が脈打つ音だけが響き渡る。

ドクン、ドクン、ドクン……

優香はゆっくりと両手で佐藤の頬を抑え、顔を近づけてきた。

ドクン

心臓が破裂するのではないかと思うほどだ。

優香は佐藤の口の中に舌を入れてきた。
優香の舌はからからにかわいていた佐藤の口の中でねっとりと吸い付いた。

ドクン、ドクン、ドクン

頭がぴりぴりする。
体の感覚が麻痺する。ただ優香の舌先がビリビリするだけだ。
しばらくの間、優香は佐藤の口をなめ回した後、ようやく顔を離した。満足げに微笑んでいる。

佐藤は彼女の目を見つめて言った。

「圭太と……結婚するんだろ?」

優香はにっこり笑う。

「するわよ」
「……じゃ、こんなことしないでくれ」

「やめない」

優香は、怖い顔で佐藤をにらみつけ、押し殺したような低い声を出した。

「私が好きなのはあなただけだもの」

それだけ言うと、優香は馬乗りになったまま佐藤に抱きつく。
首筋に口づけをして、耳元でささやいた。

「あなたは何でここに来たの? 私を好きだからでしょう。
私、知ってるのよ。あの食事会で私が圭太とキスした時、あなたがものすごい顔で睨んでたの。」

優香は不敵な笑みを浮かべる。

佐藤が呆然としていると、優香は後ろに回していた手をそのまま前の方へ滑らせ佐藤のシャツのボタンを一つ一つ外していった……

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