手に入れる女
佐藤は茫然自失して優香のマンションを後にした。
我を忘れるほどの激しさが込み上げてきて自分でも自分に何が起こったのか理解できなかった。
ただ……、心の内からほとばしる激情に身を委ねていると、何とも言えない恍惚感を感じた。
こんなに自分をさらけだしたセックスは初めてだった。
獣のように優香に襲いかかる。自分の肉欲の思うがままにぶつけてむしゃぶりつくようなセックス。
それでいてお互いを悦ばせあって、深いところで結びつくようなセックス。
優香を欲していることを自覚せずにはいられないような交わりだった。
ーーこの先、オレはどうするればいい……?
まだ頭がクラクラして何も考えられないが、優香を誰にも渡したくないことだけははっきりとわかっていた。
自宅までの道のりをとぼとぼと歩いていても、まだ夢からさめやらぬような、そんな気分だった。
「……ただいま。」
ぎいっと玄関のドアを開けると、美智子の明るく少し高い声が飛んで来た。
「のりさ〜ん、おかえりなさ〜い。」
うきうきとスキップしながら佐藤の所にやってくる。最近の美智子のはしゃぎようはちょっとしたものだった。
以前は、こんな美智子の姿を目を細めて見ながら、自分は幸福な男だと実感していたものだったが、今は、そんな暖かでしみじみとした気持ちを感じる事ができないのだった。
変わったところは美智子のどこにもないのに。……優香の激しさに触れて、佐藤が少し狂ってしまったのかもしれなかった。
美智子は、毎晩の様に圭太に電話をかけて、結婚式のアレコレを聞いているらしい。
優香の仕事が忙しくてあまり口出し出来ないのをいいことに、あっちこっちに話を聞きに行ったり、式場をいくつも見て回ったり、かなり精力的に動き回っていた。
美智子は嬉しそうにその日の戦果を披露した。
日中に会ったプランナーの話である。
「その人がプロデュースした結婚式を今日DVDで見たのよ。すっごく素敵だったから、その人に頼みたいなって思ってるの。」