手に入れる女
圭太は声を出しながら、靴を脱ぐ。足元には男物の靴があった。
かすかに人の気配がする。
いつもと違う何かを感じ取って、圭太の鼓動が早まる。
そろりそろりと、忍び足で中に入っていった。
寝室の方からギシギシとかすかな音が聞こえて来た。
耳をすますと、聞き慣れた喘ぎ声が耳に届いた。
思わず、足が止まる。
息苦しくなる。手足が震える。
何が起きているか知りたくない、このまま帰ってしまおうか。
一瞬思ったが、しかし、指先でぱちんとはねとばされたこまのように、何かに突き動かされた。
寝室に向かって進んでいく。
開けっ放しのドアから恐る恐る部屋の中を覗いた。
ベッドの上で、男女がまるで獲物に食らいついた獣のように求め合っている。圭太はその淫靡な激しさに茫然とした。
シーツの下に隠れている二つの体をじっと凝視する。
見覚えのある横顔がシーツの横からちらりと見えた。
「親父……?」
半信半疑で呟く。
ようやく圭太に気づいた二人は圭太の方を向いた。