手に入れる女
急なことに美智子が当惑していると、圭太は、きっとした顔で美智子をまっすぐに見つめた。
鋭い視線。
「母さん、落ち着いて聞いてくれる? 優香さん、親父と寝てたんだ」
圭太はすぐに美智子から手元のコーヒーに視線を移した。静かにゆっくりとコーヒーを一口すする。
佐藤が再び美智子に視線を向けると、彼女はぽかんとした顔のまま、突っ立っていた。
微動だにしない。
こわれたロボットのように固まっていた。
「のりさん……?」
随分と長い間があった後、ようやく夫の名を呟いた。
美智子の反応は極めて鈍かった。
圭太はもう一度一語一語、はっきりとゆっくりと繰り返した。
「そう。母さんの、大好きな、のりさんが、優香さんと、やってたの! 優香さんのベッドで」
美智子は暫く声が出なかった。
「……そう」
美智子が言ったのはただそれだけだった。
「……母さん? オレが何言ったかわかってる?」
「ええ? うん、もちろん、わかってるわよ……。うん……わかってた……」
美智子はそれだけ応えると、絶句してその場にへたりこんだ。