手に入れる女
ーーああ、そうだったのね。
のりさんは優香さんを好きになっちゃってたのね……
奇妙なことにどこか冷静に納得して受け止めている自分がいる。
ここのところ、美智子は佐藤とはずっとモヤリとした何か噛み合ないような感じがしていた。それが、これだったのだ。
パズルのピースがピタリとはまった時のように、全てがすっと腑に落ちた。
ーーそういうことか……なるほど……うーん……
どこかで知らない他人の話のような気もして、それ以上なんの気持ちも浮かんでこない。
いや、衝撃が大き過ぎて全ての気持ちをシャットアウトしているのかもしれなかった。
美智子は圭太の隣りに座って、二人は言葉もなくそのままぼーっとしていた。
その日、夕方になって佐藤が家に戻って来た。
いつもと変わらぬ足取りで、ただいま、と言ってリビングに入る。
待ち構えていたように、美智子、圭太、聡子の3人が揃ってリビングのソファに座っていた。
これはいつものようではない。三人の威圧感にぎょっとしながら部屋に入る。
美智子はさりげなく立ち上がっていつものように振る舞おうと必死だった。
しかし、彼女もこの部屋に漂う恐ろしいまでの重圧感にかなり動揺しているらしく、オロオロとしてとんちんかんなことを言っている。
あせるあまり、ウロウロと歩き回る美智子を見ていると佐藤は何とも言えない気持ちになった。
横から聡子がヒステリックに美智子に叫ぶ。
「ママ!しっかりして」
美智子はしゅんとなって、小さな声で「あ、そ、そうだったわね」と誰にともなく言った。
返って美智子の方が何か悪いことでもしているのような、そんな遠慮がちな態度で小さくなっている。
そんな美智子が不甲斐ないと思ったのか、聡子が佐藤をキッと睨みつけて叫んだ。
「パパ、こっちに来て。何で私たちがいるか分かってるわよね!?」
聡子の声はますます甲高くなっていった。
佐藤は、自分の身に降りかかっていることのような気がしなくて、遠くから自分とは関係のない映画か何かを見ているような錯覚を覚える。