手に入れる女
「じゃあ今度、昨日のコーヒーのお礼に、すっごくおいしいチーズケーキ、ごちそうしますよ」
どうしても声が弾んでしまう。
話しているうちに頬が紅潮してきた。
「小泉さんはチーズケーキがお好きなんですか?」
「そ、私、チーズケーキ大好きで、都内の有名なチーズケーキは多分全制覇してると思いますよ。でも、一番美味しいのは私が作るチーズケーキ」
いたずらっぽく目をキラキラさせて朗らかに話す。キュートな優香の笑顔が眩しい。
佐藤はぽーっとなって少しの間優香にみとれた。
「すごいな。自分で作るんだ」
実際、料理をするというのが意外な感じだった。
「チーズケーキだけですけどね。私、自分好みの究極のチーズケーキを目指したことがあって、自分で必死にレシピを開発したんです。
門外不出ですよ、このレシピは。レモンと砂糖の微妙な差が……」
優香の話は止まらない。
夢中になってチーズケーキを熱く語る優香の顔はキラキラしている。チーズケーキに傾ける情熱が佐藤にも伝わってくる。
優香は、温度の高い女のようであった。
「仕事から帰ってから、毎晩毎晩ちょっとずつレシピを変えて、全部なんて食べられないから、一口食べて冷凍したりして。
あげる相手もいないのに、ばかみたいにたくさん作ったりして。
食べきれないから会社にも持って行ってたんですけど、しまいには、そこでも飽きられました。
作りすぎていたので。徹夜した事もあるんですよ」