手に入れる女
ここのところ、優香は忙しさを増していた。

ミツワ化粧品の買収が最終段階を迎えていたし、トーホーの担当も横やりが入ってはずされようとしていた。
そもそもトーホーが優香を見込んで依頼してきたのに、事務所の都合で担当替えのようなことになるのを見過ごすわけにはいかなかった。

こういう社内営業的な政治的駆け引きにエネルギーと時間が消耗されるのは優香には非常に不愉快なことではあったが、他人に丸投げしていい加減な仕事をされてはたまったものではない。
何としても優香は担当として仕事をするつもりであった。

それに、もう一件、仕事になりそうな案件が来ているのでそちらのフォローもしなくてはならない。

全く時間がいくらあっても足りなかった。

それなのに、その日も、シニアパートナーにいかに自分がトーホーの仕事をやるにふさわしいかを説得しているうちに、午前中のほとんどがつぶれてしまった。

朝の分を取り返すべく軽くランチを食べた後は猛烈に仕事をしたが、思うように進まない。イライラしていた優香はちょっと一息つこうとコーヒーショップに立ち寄った。
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