手に入れる女
微妙に言い返せない山本は、この話を続けると形勢不利と感じたのか、話題をもとにもどした。
「で、チーズケーキの彼女、どうすんの?」
「そうなんだよ、どうしよう」
今度は佐藤が頭を抱えた。
全く男というのは情けない。
「今はうまいこと避けてるんだけど……多分、また顔を合わせると思う。
……いや、絶対合わせるな。そうなったら、オレ、断り続ける自信ねー」
優香の激しさと意志の強さは、佐藤もよく分かっている。
一たび優香が突き進んで来たら、それをはね除ける自信はない。
「なにその弱気、珍しい。どうしちゃったの。いつものように淡々と対応しなさいよ」
山本が首を傾げた。
「だよなぁ」
非常に残念そうにため息をついている佐藤を見て、何となくいつもとは違う空気を感じる山本である。
「いやいやいやいや、その未練がましいため息なんなの?」
「未練がましい?」
佐藤は自覚していないようだ。
「そ、未練たっぷりじゃないの、ため息が。
ひょっとして会いたいとか思ってんじゃないの? ダメだよ、浮気しちゃ。シャレになりませんよ」
いつもと違う佐藤に、山本は心配になってきたのかもしれない。
「わかってるよ。」
山本に答えながらも、本当にわかってるのか、と自問したが、答えは出せなかった。
彼女のことを考えると、体の中が妙にざわざわと落ち着かない感じがするのだった。