手に入れる女
「で、どんな人なのよ、あなたのお父さんとお母さん」
「どんな人って、別にフツーだよ。親父は穏やかな感じで……あ、そうだ、職場が優香さんとこのすぐ近くだと思う。本社勤務だから」
優香はドキッとして顔色が変わった。
「そうなんだ。何て会社?」
「イシバシ電機産業」
ーーえ?
優香は耳を疑った。
手が小刻みに震える。
手の震えが圭太にわからないように抑えて、やっとのことで声を絞り出した。
「もしかしてハゲてる?」
圭太は目を白黒させた。
「何なに、何で? ハゲはダメなの?」
震えが治まるとなんとかいつもの声にもどった。
つとめて軽くなるように言い返したかったが、わざとらしさがまとわりついたような口調にしかならなかった。
「あ、いや、友達とイシバシの人ってみんなハゲてない?って冗談で話してた事があって。仕事が大変なんだろうねーとか言っててさ」
「なんだ、それ。ひどいなー。うちの親父は別にはげてないよ。写真見る?」
圭太は、ケータイを取り出して優香に家族写真を見せた。