たすけて、みひろん!



案の定と言うべきか、静川さんからのハグという名の悪意のある追突により、風呂場で思い切り転んでしまったが。

あんな滑る場所で追突してくるのはズルいというか、なんというか。

ただ、部屋では他に呼ばれると思っていた吉野さんが部屋にいてくれたから、特に手出しされなかった。


吉野さんは話のネタが全然切れなくて、ずっと楽しそうに話していた。

どうやらカレーを作ったのも初めてらしく、一人暮らしなのにと言うと、学食で食べるからいいのと言っていた。

「逆にさ、美乃ちゃんはカレーとか作れるの?野菜切るのうまかったけど」

ずっと聞き側に回っていたから、いきなり話を振られて慌てた。

ふと、小学校高学年の頃の寂しい家の中が思い出された。

「うん、作り方さえ分かれば…。小学校高学年の頃はよく夜ご飯作ってたから」

新しい母、今のお母さんが来たのは中学校1年生の時だった。


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