たすけて、みひろん!



第一、イジメなんてする人たちに話が通じるわけないし、反論するだけ無駄だ。

「静川さん、気をつけてね」

少しだけ氷のような冷たさを含んだ吉野さんの声が部屋に響いて消えた。

それは一瞬の出来事だったのに、少しだけ長く感じて。

「…ああ、うん、ごめん」

静川さんが、そう慌てて謝るまでのほんの数秒が長く感じた。


「あ、ほら、5段までできたよ。すごいでしょ?」

えへへと笑って自慢してみせる吉野さんに、すごいねと笑い返す。


時々見える、吉野さんの持つ冷たさには驚かされるというかなんというか。

裏の顔とか、そういうのとは何か違うんだけど、ただ少しだけ怖いと思う。


その冷たさが、冷酷とかの冷たさなら良かったのに、そういう冷たさなら良かったのに。



< 118 / 284 >

この作品をシェア

pagetop