たすけて、みひろん!



そんなに強くではなかったため、鈍い痛みがゆっくりと響いていく。

「ねえ、あの子のキーホルダー、あんたが転んだせいで落としちゃったみたいなの」

言いたいことが分からなくて、だから何なのと首を傾げる。

するといきなり胸ぐらを掴まれて、ベランダへと投げ出された。


「ここ2階じゃん?飛び降りて取りに行ってきてよ。

ちゃんと取ってくるまで、ここ、開けてあげないから」

なにそれ、と反論しようとする前に扉を閉められる。

鍵を閉めて、ちゃっかりカーテンまで閉めて、中からは私がいることが分からないように。

ベランダ叩いて助けを求めるのもアリだけど、静川さんが開けるわけないし、吉野さんはいつ帰ってくるか分からないし。

第一静川さんのことだから、悟られないように何かするんだろう。


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