たすけて、みひろん!



山の方からおりてきたのは、狼のようにも見える犬だった。

まさかこんなところで野犬に出くわすとは思わなかった。

体力がない私が、施設の方まで走りきれるわけがないし、助けを求める場所でもない。

こんなことになるなら、興味あるからってこなければ良かったと、舌打ちをする。


絶体絶命のピンチなんだけど、頭は意外と冷静で落ち着いていて、どう逃げようかと小さく周りを見渡した。

でも、逃げ場がない、逃げたところで追いつかれる。

グルルルと唸る野犬の声に一歩退いたと同時に、

「一大事だね〜」

フワフワとした聞き覚えのある心地よい声が耳に響いた。

声のした方を見た途端に、懐中電灯で照らされ眩しくて目を細めた。


< 148 / 284 >

この作品をシェア

pagetop