たすけて、みひろん!
山の方からおりてきたのは、狼のようにも見える犬だった。
まさかこんなところで野犬に出くわすとは思わなかった。
体力がない私が、施設の方まで走りきれるわけがないし、助けを求める場所でもない。
こんなことになるなら、興味あるからってこなければ良かったと、舌打ちをする。
絶体絶命のピンチなんだけど、頭は意外と冷静で落ち着いていて、どう逃げようかと小さく周りを見渡した。
でも、逃げ場がない、逃げたところで追いつかれる。
グルルルと唸る野犬の声に一歩退いたと同時に、
「一大事だね〜」
フワフワとした聞き覚えのある心地よい声が耳に響いた。
声のした方を見た途端に、懐中電灯で照らされ眩しくて目を細めた。