たすけて、みひろん!
「…大丈夫、私が助けてあげる。だからさ、お願いがあるの」
未だに襲ってこない野犬を横目に、吉野さんが微笑んだ。
「みひろんって呼んでよ」
意外な一言に、思わずえっと声を零した。
お願いっていうから、今じゃなくて後にやってほしいことだとか、もう少し難しいものだと思った。
それに、今このタイミングでみひろんって呼んでと言われても。
「えっと…、みひろん…?」
そう呼んでみると、嬉しそうに頬を染めて笑いかけてきた。
照れ笑いしたのもつかの間、スッと野犬の方に向き直す。
「んーとさ、こんなこと言うのおかしいかもしれないんだけど、見逃してくれないかな?」
いきなり野犬に話しかけ始めた吉野さん…もといみひろんに目をやる。