たすけて、みひろん!
静川さん達、まだ寝てないんだなと思っていると、みひろんが気にせずベランダの扉を開けた。
私も突き刺さる視線を一切気にしないで、静川さんが教えてくれた子にキーホルダーを渡した。
「これだよね?見覚えあったから拾ってきた」
そう言って手渡すと、ありもしないはずの落し物に静川さんまでワタワタしだして。
「なくしてたんだっけ、よかったね」
その様子を見ながら、みひろんはたっぷり嫌味を込めた言葉を投げはなった。
そのまま寝ようとするみひろんにつられて私も布団に潜り込む。
小さな声でどういうことだと話し合う声を聞きながら、私達は目を合わせて笑い合った。
「ありがとう、みひろん」
できるだけ小さく放った一言で、みひろんは笑顔に花を咲かせた。
私は気付いていなかった。
最後に浮かべたみひろんの悲しそうな表情に。
この時のみひろんがついた、精一杯の嘘に。