たすけて、みひろん!
そんな静川さんからの視線を無視してみひろんに向き合うと、小さな声でお礼を言った。
みひろんは何のことかととぼけてみせたけど、きっと何のことか分かっている。
だからあえて内緒だと意地悪して、もう一度だけお礼を言っておいた。
そして、その週の土曜日のことだった。
いつも通り翔也くんの病院に行く前に、みひろんに教えてもらったとおりにお化粧をして、
みひろんと選んで買った服を着て、髪もお母さんのを借りて少しだけ巻いてみた。
「うわっ、なんかチャラくなったかも…」
ついそう呟いたけど、よくよく見れば化粧もそんなに濃くないし、髪も黒で緩く巻かれていて、
自画自賛してしまうくらいいい感じだ。
翔也くんなんて言ってくれるかなとワクワクしながら、家を出て自転車を漕いで病院に向かった。