たすけて、みひろん!
何かを忘れている気がした。
誰かの、何かの死に直面したことがあるはずで、その悲しみを体は覚えている。
みひろんに抱きしめられてこんなにも落ち着くのが、その証拠といえる。
安心する胸の中、目をつむってみひろんに身を委ねる。
私の記憶に刻まれている死は、かつての母のものだけだ。
けれど、私はその母の顔を思い出せないし、どうして死んでしまったのかも知らない。
お父さんに何度か尋ねたことはあるが教えてはくれず、知らない方が幸せだと言うから、聞くに聞けなくなっていた。
「…よし、じゃあ記憶を私の携帯に入れておくね」
しばらくして声をかけられる。
あまり時間は経っていない気がしたけど、時計を見ると10分ほど経っていた。
記憶関係のためか、意識が薄れていたようだ。