たすけて、みひろん!
ド定番の捨て台詞を吐いて、トイレから出ていこうとする。
それを見送ることもせず、水の滴る感覚に憂鬱になった。
イジメのマニュアル本でもあるのかと思うくらい、分かりやすい話の流れ。
だけど、ガタッと音がして女子たちがこちらへ戻ってきた。
扉の近くには、綺麗で長い黒髪を揺らす人形みたいなあの子。
そうそう、こうやって助けてくれるんだよ。
こういう言い合いになった元凶とも言える人物が。
「なにしてるの?」
吉野さんの声が、女子トイレの中に響いていく。
吉野さんは淡く微笑んでいて、ズンズンと中へ入ってくる。
「えっと、なんでもないよ?」
女子たちは必死になって私を隠し、吉野さんに向かって平気で嘘をはいた。