たすけて、みひろん!
吉野さんの髪が首をかすめてくすぐったい。
「濡れてもいいよ。
白雪さん、いい匂いする」
ギューッと強く強く抱きしめて、少しだけ痛くて緩めるよう態度で示す。
吉野さんは慌てて力を緩めてはくれたけど、離してはくれなくて。
「いつもは静川さんが後ろから抱きしめてるよね。
すごい羨ましかったんだあ」
いきなり出てきた静川さんの名前に、驚いて軽く体がビクッと震えた。
それに吉野さんは気付いていないみたいで。
イジメられてます、なんて口が裂けても言えなくて。
ただ、吉野さんの腕の中は温かくて、すごく安心できて、イジメの傷がやわらぐ気がした。
なんだか重たい悲しみが、少しだけ軽くなった気がした。