たすけて、みひろん!
私の筆箱を手にした吉野さんは、ファスナーをあけると中からビー玉を取り出した。
「ほら、ちゃんと移動してるでしょ?」
いつもの人たちに向かってビー玉を見せつける吉野さんから察するに、またマジックをやっていたようだ。
しかも、ビー玉を私の筆箱に移すマジック。
勝手に人の筆箱を使わないでほしいが、誰かが頼んだのなら仕方ないというか。
すごいと吉野さんに拍手を送るかたまりの少し離れたところで、コソコソと話し声が聞こえた。
「最近あの2人仲が良いみたいじゃん?」
「どうせ白雪さんもグルなんだって」
拍手がピタッとやんだせいで、ハッキリ聞こえてしまったそんな会話。
夢のないことを言う女子たちに、怪訝な顔をするマジックを見ていた人たち。