たすけて、みひろん!
胸ポケットからトランプを取り出した吉野さんが、
「ねえ、ちょっと見てて!」
そう言ってトランプを長袖の袖の中に隠した。
そうして指を鳴らしたあと、袖の中にはないことをみんなに確かめさせて。
そうしてさきほどまで吉野さんの悪口を言っていた人たちの方まで歩いていって。
「ちょっとごめんね」
そう断ってから焦る女子たちの中の1人の胸ポケットから、スッとトランプを取り出した。
取り出されたトランプは、確かにさっき吉野さんが隠したもので。
悪口を言っていたのもあり、協力なんてしていないことが証明されて拍手が集まる。
えへへと照れ笑いする吉野さんの周りに、一瞬にして人が集まる。
吉野さんは私だけじゃなくて、その笑顔でクラスのみんなを笑顔にしていた。
みんなを笑顔にする、幸せにするマジックのような笑顔には、きっとタネなんてない。
タネのないその笑顔が、すごく羨ましく感じた。