紅蓮の姫君
「……………。」
静寂。
無音。
沈黙。
今現在のこの状況に当てはまる言葉が見つからない。
王宮の一室。
あたりは爆発で瓦礫の雪崩(なだれ)が出きている。
青年は目の前で倒れる男をただただ見下していた。
「……悔しい?」
ひどく透き通った声が響き渡る。
「あの日とは真逆だね。」
「……何故…ゲホッ…アリアを逃す事を…止めなかった……?」
男は喘ぎながらも言葉を並べた。
「何故?逆に俺があの子を恨む理由がある?むしろ、あの子も俺とおんなじ被害者なんじゃないの?」
青年は口角を上げると、男の頭にその足を乗せた。
まるで踏み潰すかのように地面になすりつけると、男はまた血を吐いた。
「さようならヴァルカン国王陛下。」