紅蓮の姫君

「予言?」

この国では、王族はもちろん、貴族や民の元に赤ん坊が誕生すると、予言者がその赤ん坊の未来を予言するという風習があった。
父はその事を言っているんだ。とすぐに納得は出来たものの、自分の予言を聞いた事が無かったアリアは違う意味を込めて質問を投げ返した。

「それはとても恐ろしい予言だった。」

アリアと同じ漆黒の髪が風に揺れる。
アリアはアスランの横顔をじっと見つめて、話の続きを待った。

「姫の齢18を迎える誕生日の日、この国は大きな災いに苛まれるだろう。」

アリアはなんの言葉を返すこともできず、ただ沈黙だけが流れる。
娘の戸惑いに気づき、アスランは体を向き直すと、ジッとアリアの瞳を見つめた。

「手は尽くした。出来る限りの事はした。この予言が実現しないように。」

「………………だから」

アリアがやっと出すことができた声はかすれていた。

「だからずっと、予言の内容を教えてくれなかったのですね。」

綺麗な赤色をした瞳が不安げに揺れて、アスランもまた、アリアを悲しげに見つめた。
どれだけ手を尽くしても、高い確率で予言は実現する。そしてその現実からは逃れられない事を2人は知っていた。

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