紅蓮の姫君
18になって初めて知らされた現実を受け止めるための精神力は十分にあった。
いずれは王の跡を継いで女王ーーこの国の統治者となる身。幼い頃から受けていた政治、魔法、武術、様々な教育のおかげで、アリアはこの国を治めるにはふさわしい心の持ち主に育った。
賢く優雅で美しい姫君に、国中の人々は未来に希望を持つことができた。
だが予言が実現する事によって、国中の人々の明るい未来が壊れる事を考えると、アリアの胸はひどく痛んだ。
「予言は必ずしも実現するとは限らない。あくまで高い確率で実現するだけだ。だから……。」
アリアは自分を安心させようとしている父の気遣いに気がつくと、そっと首を横に振った。
「きっと大丈夫だと、私は祈っています。」
アスランを見つめるアリアの瞳は今の王の姿を遥かに上回るほど勇敢だった。
我が子の成長を感じたアスランは、恐怖と歓喜の入り混じった涙を流すと、そっとアリアを抱き寄せた。
「もしもその時が来たら、私がこの国を救い出して見せるわ。」
アリアは父の大きな背中を優しくさすると、そっと瞳を閉じた。
(……この国の次期女王として。)