紅蓮の姫君
アリアは眠れずにいた。
迫りくる嫌な予感に、ドレスを脱ぐ事も出来ず、ただひたすらバルコニーに立っていた。
雲は先ほどよりも分厚くなり、沢山の雨を降らせている。
遠くで轟く雷の音に、アリアは怯える様子もなくただただ耳をすませていた。
「…………予言は実現するわ。」
遠くから、明かりが見える。
その明かりは少しずつ城に近付いて、まるで城を飲み込もうとしているようだった。
アリアは急いでバルコニーから離れると、ドレスを着替え、部屋の隅の剣を手に取った。
大きな扉を押し開くと、見張りの兵士達が目を丸くさせてアリアを見つめた。
「みんな起こして。もうすでに何者かがこちらに向かっている…急いで!」
アリアがそう指示すると兵士達は一瞬驚いた表情を見せて従う。
「アリア……!」
聞き覚えのある声が聞こえて横を見ると、隣室にいたアスランが部屋から出ていた。
「お父様……」
アスランがアリアを見つめる瞳は悲しげで、まるでアリアに謝ってるようにも見えた。