狼くんの逃走日記
中に入ると既に大勢の客が所狭しと座っている。今日はどうやらイベントの日らしい。
メダルを箱に入りきらんとばかりに詰めて、箱を積みあげている客も出始めていた。
チー太は周りを見渡して思った。
「これならすぐにでもボーナスが入りそうやなぁ。今日は最低でも四~五万は勝ちたいな。二箱は積んで帰らんと。まぁ今日は勝てそうやなぁ」
人気機種台を狙って空いている席を探していると一台だけ空いている席を見つけた。
隣の台では丁度ボーナスが入っている。
「よ~しいっちょ吹かしたるか!」
意気上がるチー太は煙草の箱を機械のメダル貯めに置いて席を確保し、壱万円札を千円札に両替した。
「最初の壱万までには入ってほしいな。」
チー太は千円札を投入していく。隣の台を見ると連続してボーナスが続いており、すでにメダルは溢れんばかりの量になっていた。
チー太の座っている台にもボーナスが期待出来る演出になった。
「これでこいっ!」
チー太は強く思うが、期待通りにはいかなかった。結局壱万円を使っても何も起こらなかった。
「…まぁ、もうすぐやろ…」
チー太は自分に言い聞かせたが、少しの不安が頭によぎる。
「これで五万使っても入らんかったらどないしよ…」
しかしまたすぐに期待の持てる演出が機械の画面上に映る。
「もうすぐやろ。この台は設定良さそうやな」
知るはずもない機械の設定を演出が出る度に予想が予想を呼ぶ。
こうしてチー太はこの先に待ち受ける自分の運命を知るよしもなく、スロットというギャンブルに身を任せるのだった。
< 3 / 4 >

この作品をシェア

pagetop