ピーク・エンド・ラバーズ


大学には、今まで以上に色んな人がいる。
髪の毛がピンクのバンドマン、肌の露出が多い美人、図書館の一番奥の席でいつも本を読み耽っている勤勉家。

私はどれにも当てはまらない。無難な服装、無難な髪型、講義はきちんと受けて適度に手を抜く。

隣を歩く芽依は、いわゆる「陽キャ」という類いなのだろう。
ダークブラウンの毛先を緩く巻いて、毎日メイクもばっちり。彼女が着ているおしゃれな服は、どこで買うんだろう、と未だに疑問だった。


「お疲れ様で~す! って、あれ。全然人いないじゃん」


永北大バスケサークル、と書かれたドアの向こう側。快活に挨拶をした芽依が、中を見渡して肩を竦める。


「おー、おつおつ。今日やたら一年しか来なくね?」


既に部室にいた男子が、軽く手を挙げて苦笑した。彼も私たちと同じ一年生だ。


「てか西本さんもここに来んの珍しいね。どうせ名倉(なぐら)が無理やり連れてきたんだろうけど」

「大正解だけどさ、いちおー加夏の了解も得てるからね、こちとら」


男子と芽依の会話を後ろで黙って聞いていたら、部屋の奥にいる「彼」と目が合った。それとなく移動して、隣に腰を下ろす。


「お疲れ」

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