ピーク・エンド・ラバーズ
手持ち無沙汰なのか、ペットボトルを手で転がしながら彼が言う。
私は頷いて、ちらりと相手の顔を窺った。
「……津山くんも、空きコマ?」
「うん。まあいつも結構ここにいるけど」
「へえ」
「はは。興味ないじゃん」
興味がないんじゃなくて、妙に緊張している。
手に持っているミルクティーと同じ色の髪、再び耳朶に空いたピアス、清涼な香水。津山くんは、少しだけ以前のような外見に戻った。
大学生になって色々とおしゃれをする人も多いし、それ自体は別にどうということはなくて。
ただ、新しい彼を見てしまったというか、いきなり制服を取っ払って知らない男の人が目の前に現れてしまったような感覚。
津山くんってこんなに背が高かったっけ。大人っぽかったっけ。一ヶ月経ってもまだ見慣れない。
「あー、ちょっと加夏。ケースケがつまんないからって逃げないでよ」
芽依が口を尖らせて、隣に腰を下ろした。
ケースケ、ああそうだ、そんな名前だったな、とようやく芽依と話していた男子の輪郭がはっきりしてくる。実を言うと、名前を覚えるのはあまり得意ではない。
「俺のせいにすんな。てか岬と西本さんって、仲良かったっけ」