ピーク・エンド・ラバーズ


振り返ったケースケくんが突然そんなことを聞いてくるから、ぎくりと体が固まった。
不思議そうに首を傾げる彼に、芽依が「え~?」と声を上げる。


「ケースケ、知らなかったっけ? 二人付き合ってんだよ」

「えっ、まじで? いつから?」

「高校同じだったんだって。ね、加夏」


名指しで話を振られてしまっては、無視もできない。
うん、と短く答えた自分の声はか細くて、随分と頼りなさげだった。

津山くんは講義の終わる時間が同じ日、よく一緒に帰ろうと連絡してくる。
芽依といる時に彼が現れることもしばしばあるので、彼女には一応「彼氏です」と紹介していた。

気恥ずかしくて自分から積極的に彼との仲を公表する気にもなれなかったし、津山くんもそんな私に合わせてなのかどうなのかは定かではないけれど、大っぴらにカノジョの話題に触れることはないようだ。


「えー、それは知らなかったわ。なんか意外。岬にこんなしっかりした彼女がいるとは」


何だよそれ、と相槌を打つ津山くんは、確かにどこからどう見ても明るくてチャラそうで、女の子には困っていないような容姿をしている。
意外、というケースケくんの素直な感想も、あながち第三者評価としては間違っていないだろう。


「あ、やべ。俺これからバイトだった。じゃあ行くわ」

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