ピーク・エンド・ラバーズ
立ち上がったケースケくんに、ふぁいとー、と芽依が気の抜けた応援を送る。それから彼女は私たちを見やり、「じゃあ私も出ようかな」と言い出した。
「え、何で? それだったら私も行く」
「いやいや、流石にカップルの間に居座るほど神経図太くないって~。邪魔者は消えまーす」
「ま、待って。芽依、ほんと、邪魔じゃない。全然邪魔じゃないから」
腰を浮かせて、必死に彼女を引き留める。
二人っきりの空間、というのは付き合ってから何だかんだ今日が初めてで、心の準備ができていなかった。なぜだか分からないけれど、「彼氏」だと意識してしまうと、彼に上手く接することが難しい。
「お願い。芽依だって暇でしょ? ほら、三人で話そう」
「んー……ま、うん。私はいいんだけど」
釈然としない面持ちで、芽依が再び腰を下ろす。しかし頬杖をつくと、唐突に言い放った。
「じゃあ、二人の馴れ初め教えてよ」
「な、……何で」
「興味本位?」
芽依にとっては純粋に暇つぶしのつもりなのだろうけれど、こっちとしては気が気じゃない。
言葉を詰まらせる私の代わりに、津山くんが口を挟んだ。
「普通に俺から告白して付き合った。以上!」
「えーっ、つまんな。もっと具体的に」
「ちょっとそこは事務所NGなんで」
「どこの事務所だよ」