ピーク・エンド・ラバーズ
考えてもきりがないことを整理しようとするのは、時間の無駄だ。
頭を振って彼に告げ、足早に歩き出す。
津山くんと二人で帰ること自体は、そこまで嫌じゃない。というか、どちらかというと好きな方だった。
彼は大学でも相変わらず人気者で友達が多い。騒がしく喋っている印象が強いけれど、私といる時はあまりうるさくなくて、その方がこちらとしても助かる。穏やかに静かに、外の空気を感じながら過ごす時間は落ち着いていた。
「今日さ、バイトの時間いつもより一時間遅いんだよね」
構内を出て外を歩いていると、津山くんがぽつりと口を開く。
そうなんだ、と返事をしようとした時、彼が私の方を見て首を傾げた。
「だから、西本さんのこと家まで送ってこーかなって」
「え、いや……いいよ、別に。夜でもないし」
突然そんなイレギュラーをぶちこまれても困る。平静を保てない。
しかし彼は控えめに笑って、「察してよ」と頬を染めた。
「俺がもっと一緒にいたいんだってば」
「……な、」
不意打ちの剛速球だった。つられて私まで顔が熱くなってしまい、目を伏せる。
「ねえ、手繋いでいい?」