ピーク・エンド・ラバーズ


と、不意に横から聞き慣れた声が私を呼んだ。
弾かれるように振り向けば、学校帰りの優希が私と津山くんを見比べて、立ち尽くしている。


「あ……え、と、ごめん。おかえり」


どもりながらも告げて、私は優希の方に駆け寄った。
正直、彼氏といるところを家族に見られることほど、恥ずかしいものはない。


「津山くん、あの、私の弟です。優希。いま高二なんだけど」


早口で事務的に述べれば、津山くんは「ああ」と若干気まずそうに会釈をした。


「津山岬です」

「……はあ、どうも」


優希はまじまじと津山くんを上から下まで観察するように眺め、無愛想に返事をする。
軽く小突いて「こんにちはくらい言いなさい」と叱る私に、弟は眉をひそめるだけだった。


「あ、えーと……じゃあ俺、行くね」


津山くんは私にそう言い渡し、最後に優希にもう一度ぺこりと頭を下げてから背を向けた。

家の前。弟と二人。かつてないほど気まずい沈黙が落ちる。


「彼氏?」

「は」

「今の人、家まで送ってくれたんでしょ。彼氏じゃないの」


淡々と確認する優希に、まあ、うん、と曖昧に頷く。


「なんか意外。姉ちゃんああいうタイプ苦手だと思ってた」

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