ピーク・エンド・ラバーズ
前触れもなくぶつけられたその言葉は、なぜか妙にどきりと心臓が冷えた。
発言者本人はさほど興味もなかったのか、そそくさと玄関ドアを開けて家の中に入っていく。
「ゆ、優希」
私も彼にならって靴を片方脱ぎながら、声だけで追い縋った。
「意外って、変ってこと?」
「は?」
「私と津山くんが付き合ってるのって、変なのかな」
つり合わないとか、相性が良くないとか、周りにはやっぱりそう見えるんだろうか。
この前、ケースケくんにも「意外」と言われてしまったし、私たちが「お似合い」であるとは思っていないけれど。
「別にそんなこと言ってない」
「じゃあ、どういう人と付き合えば『意外』じゃないの」
更に問いかければ、優希は「はあ?」と面倒そうに顔をしかめる。
「知らな。なんか普通に、真面目そうな人じゃね?」
それ以上は会話を続ける気がないようで、優希は階段を上って自分の部屋へと向かっていった。
「真面目そうな人……」
って、なんだろう。黒髪で眼鏡をかけてて、読書好きで成績優秀?
少なくとも今の優希の口ぶりからして、津山くんが真面目そうな人ではないのは確かだった。