ピーク・エンド・ラバーズ
*
「なんと! ワタクシ、ついに彼氏ができました~!」
わっ、と短く歓声が上がる。
栞さんは自身の頭を掻きつつ、照れたように表情を和らげた。
「いや~、ついにしおりんにも春が……」
「あの永遠に彼氏ができないと嘆いていた栞が……」
「ちょいちょいちょい! エターナルとは言ってないからね!? 大学入ってから全然できない、もしかしたら社会人になってもできないかもしれないって言っただけであって!」
居酒屋――の、裏の従業員室。
その日のシフトを終えて退勤し、厨房から戻ってくると、バイトの何人かが既に話に花を咲かせていた。今日の話題は栞さんの彼氏事情らしい。
「お疲れ様です」
「あ、加夏っち! おつかれ~」
現在大学四年生の栞さんは、バイトメンバーの中でも歴が長い方で、いつもみんなの中心にいるような明るいムードメーカーだ。
月に一度は「彼氏ができない」と嘆き、その度にバイトのみんなが馬鹿真面目に「なぜ出雲栞には彼氏ができないのか」を議論していた。
「加夏ちゃん、聞いた? しおりん彼氏できたって~。私、しおりんより先に彼氏つくれるって思ってたんだけどな」
「私に勝とうなんざ百年早いわ~」
「こないだまでマッチングアプリに手ぇ出して失敗してた女子大生が何を言うか」
「なんと! ワタクシ、ついに彼氏ができました~!」
わっ、と短く歓声が上がる。
栞さんは自身の頭を掻きつつ、照れたように表情を和らげた。
「いや~、ついにしおりんにも春が……」
「あの永遠に彼氏ができないと嘆いていた栞が……」
「ちょいちょいちょい! エターナルとは言ってないからね!? 大学入ってから全然できない、もしかしたら社会人になってもできないかもしれないって言っただけであって!」
居酒屋――の、裏の従業員室。
その日のシフトを終えて退勤し、厨房から戻ってくると、バイトの何人かが既に話に花を咲かせていた。今日の話題は栞さんの彼氏事情らしい。
「お疲れ様です」
「あ、加夏っち! おつかれ~」
現在大学四年生の栞さんは、バイトメンバーの中でも歴が長い方で、いつもみんなの中心にいるような明るいムードメーカーだ。
月に一度は「彼氏ができない」と嘆き、その度にバイトのみんなが馬鹿真面目に「なぜ出雲栞には彼氏ができないのか」を議論していた。
「加夏ちゃん、聞いた? しおりん彼氏できたって~。私、しおりんより先に彼氏つくれるって思ってたんだけどな」
「私に勝とうなんざ百年早いわ~」
「こないだまでマッチングアプリに手ぇ出して失敗してた女子大生が何を言うか」