ピーク・エンド・ラバーズ
純粋に「あの人のことが好きだ」と貫き通せる友達が羨ましかった。私はいつも何だかんだ理由をつけて、これは恋じゃない、好きじゃない、と目を背け続けていた。
よく漫画やドラマの最後で、両想いになって涙を流すシーンがある。
振られて悲しくて泣くのは分かるけれど、好きという気持ちだけで泣けるのは、私にはまだない感情だ。すごいなあ、と思う。
あの日、私に好きだと叫んで泣いていた津山くんに、心を打たれたのは本当だ。そういう彼にちゃんと応えたいと思ったのも本当だ。
でも、私は泣いて叫んで「好き」とは言えない。彼のためなら、とか、自分のデメリットを顧みず身を投げ出す覚悟もない。
恋って、こんなに淡泊なものだっけ? 地に足がついたものだっけ?
もっと波があって激しくて、ままならないけれどそれでも構わない、そんな燃え滾るものじゃなかったっけ?
「多分、好きではあるんですけど、彼と同じだけの気持ちを返せているとは思えないんです。それって、このままでいいのかなあって、最近思って」
しん、と静まり返った空気に、我に返った。
伏せていた目を上げれば、先輩たちが私の顔を食い入るように見つめている。
「あ――す、すみません。こんな話、されても困りますよね」