ピーク・エンド・ラバーズ
せっかく栞さんのいい報告で場が盛り上がっていたのに、白けさせてしまった。申し訳ない。
ごめんなさい、ともう一度頭を下げようとした時。
「加夏ちゃん、真面目だねえ」
「……え、」
「いや、ほんと。そんな深いことまで考えたことないよ私。彼氏できたら『やったーうれしー』ってくらいだもん」
私も私も、ともう一人の先輩が追随する。
「気持ちの大きさ? とか、気にしたことない。私が加夏ちゃんだったら、別に告白された側だし、向こうがもっと私を好きにさせろよって思っちゃうかもな~」
「あっは、それは夢乃が図々しいわ~」
「えー? でもぶっちゃけ思わない? 私はね、相手にぐいぐい来て欲しい派だから」
あんたの話はいいんだわ、と笑い声交じりにツッコミが入る。少し空気が明るくなってほっとした。
それまで黙っていた栞さんが、不意に口を開く。
「加夏ちゃん的には、同じ気持ちってどういう基準?」
「基準、ですか」
そう問われてしまうと、すぐには答えを出せなかった。
そもそも無形のものを比べるなんて、簡単ではない。ただでさえ移ろいやすい恋情だ。
「いや、正解とかはないんだけどね。私もよく分かんないし。でも何となくだけど、加夏ちゃんが気にしてるのって周りからの見え方じゃないかな?」