ピーク・エンド・ラバーズ
冷静に尋ねれば、彼女は少しだけ表情を和らげる。
「もー、私は飲んでないし! そーじゃなくて、加夏が……」
「私は大丈夫だよ。だって飲んでないもん」
言外のニュアンスが伝わったのか、芽依は渋々といった様子で押し黙った。
普通に前を向いているだけなのに、視界に見たくないものが映り込んでくるから憂鬱である。
べたべたと津山くんに触っている女の子――には最早何の感情もわかない。まあせいぜい、酔うとそうなるんだね、という感想だった。
どちらかというと、私が気に食わないのは津山くんの方だ。
仮にも――いや、普通に付き合っている相手がいるのに、どうして他の子に触らせているのか。そもそも、両隣に女の子がいるとか、そんな状況すら気に食わない。
酔ってるから? 正常な判断ができないから? ううん、全部言い訳。お酒はその人の本性を暴くって、よく言うし。
「芽依。明日何限から?」
「え? 三からだけど」
「私も」
目配せをして、にやり。芽依が俄然元気になる。
「遊びに行っちゃう?」
「うん」
「てゆーか、もうここにいてもつまんないわ。どうせ後は適当に解散でしょ、とっとと出よーよ」