ピーク・エンド・ラバーズ
けらけらと笑い飛ばした灯に、ほっと胸を撫で下ろした。
真面目。その単語は、きっと私を一言で説明するのに一番似合っていると思う。
何をするにしても、堅実に地道に積み重ねることが得意だった。無難に生きる方が絶対に楽なのに、どうしてわざわざ突拍子もないことをする人がこの世にいるんだろうと、そんな規模の大きいことを考えたこともある。
「まー、何というか……羊には甘いよね、加夏は」
「ええ……? そんなことはないけど」
「いや、激甘でしょ。子離れできてないお母さんみたいな時あるもん」
「お母さんって……」
大人っぽいと言われるのには慣れているけれど、さすがにそれはちょっとショックだ。せめてお姉ちゃんで妥協してくれないだろうか。
とはいえ、灯にだって悪気があったわけではないのだろう。その証拠に、飲み物を買いに出ていた同室の子が帰ってきた途端、「ファーストキスはいつ?」などとおちゃらけていた。
「ていうか、羊まだ帰ってこないね。さっきすれ違った時はそんなに時間かかりそうな感じじゃなかったけど」
羊と入れ違いで部屋に戻ってきた朱南が、サイダーを半分くらい飲み干した頃。彼女は小首を傾げ、時計を見上げた。
「せっかく沢山話そうねって約束したのになぁ……」