ピーク・エンド・ラバーズ
グラスの中の液体を一気に飲み干した彼女は、鼻歌交じりでご機嫌だ。
私も一生懸命ウーロン茶を喉に流し込んでいたら、ケースケくんが口を挟んでくる。
「え、二人とも離脱する感じ?」
「んー、まあケースケも連れてってやらんこともないけど? どうする、加夏」
芽依に話を振られて、「いいよ」と了承した。
今日はずっと同じテーブルで会話をしていたということもあって、彼とはだいぶ気兼ねなく話せるようになっていたからだ。
「じゃあ俺もお邪魔。カラオケ?」
「そーだよ、加夏と遊ぶ時はいっつもカラオケって決まってんの。てか酒飲まないでね、治安悪くなるから」
「飲まねーよ」
幹事の先輩に声を掛けて、お金を払ってから三人で立ち上がる。
騒がしいテーブルの間を抜けていくように足早に歩いていると、がた、と突然後方から荒々しい食器類のぶつかる音がした。
「……加夏、ちゃん」
おぼつかない声。つと聞こえた方に顔を向ければ、津山くんが立ちあがってこちらを凝視している。
「ちょ、津山くんどーしたん? 急に立ったら危ないよ」
「ふらっふらじゃん。とりあえず先に水飲みなー」