ピーク・エンド・ラバーズ
周りの人に宥められ、彼は半ば強制的に座らされた。
なおもこちらを見続ける津山くんに、ケースケくんが「岬はごゆっくり」と言い渡す。芽依はひらひらと手を振って、「早く行こ」と私の背中を押した。
「いやー、見た? さっきの津山氏の顔。傑作だわ」
「趣味悪いなーお前」
「まあちょっと反省すればいいんだって。いくら酒入ってたとはいえ、彼女の前だっつーの」
すっきりしたのか、けらけらと笑って芽依が腕を伸ばす。彼女が明るく片付けてくれたので、私も心なしか晴れやかな気持ちになった。
まあ確かに、ちょっと触られていただけだし、飲み会だし、そこまで苛々することでもない。悪意のある行為ではないのだから、今日でさっぱり忘れるのが吉だ。
近くのカラオケ店に入り、スマホを取り出した時だった。
『かなちゃん、いまどこ?』
画面にポップアップ表示された、彼からのメッセージ。それを開くことはせず、家に遅くなる旨の連絡を入れて、ため息をつく。
『もうかえったの?』
『けーすけとなぐらといっしょ? どこ?』
あー、始まった。そういえば、最近津山くんがしつこい人間だということを忘れていた。これは一度火がついてしまうと、なかなか鎮火しない。
「加夏、曲入れてー」