ピーク・エンド・ラバーズ


芽依の声で顔を上げる。

返事は……まあ、別にいいか。一応これは津山くんへの反抗だし、返事をしてもどうせ連投は止まらないし。
今日くらい、いいよね。だってそもそも津山くんが悪いんだ。


「最初に入れる曲って悩むよね」

「ぶちアガるやつで良くない?」

「確かに」


スマホをテーブルの上に投げ出して、目の前の会話に集中する。
ケースケくんが意外にも音痴でお腹を抱えて笑ったり、芽依のダンスパフォーマンスつきのアイドルソングに聴き入ったり、最初の一時間はあっという間に過ぎ去っていった。

ふと視線を落とした時にスマホが振動していたので、もしかしたら母からだろうか、と手に取る。
画面を見た瞬間、思わず固まった。


「加夏、どした?」

「あ……いや、」

「津山氏?」


こくりと頷くと、芽依が「無視しろ無視」と肩を揺らす。
躊躇しているうちに着信は止んで、ほっとした。しかしその途端に溜まっていた通知が表示され、目を瞠る。

メッセージが十件、それから不在着信が五件。全部津山くんからだ。
彼のしつこさもここまで来たか、と呆れていると、再び手の中でスマホが震えだす。


「……ごめん、ちょっと一回出る」

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