ピーク・エンド・ラバーズ
何で、とは。彼女の質問の意図が分からず、こちらも首を捻る。
「だってあんなに女子にべたべたされてさー、むかつくっしょ。あんたの彼女は誰ですかって話」
「私と津山くんが付き合ってるって知らない人、いっぱいいるし。まあしょうがないんじゃないかな」
「えー……そういうことじゃなくて。妬かないの?」
「何を?」
今度こそ芽依が「え」と目を見開いた。彼女が答えるより先に、ケースケくんが明言する。
「嫉妬しないの、ってことでしょ」
嫉妬。やきもち。本来なら恋に付随するはずのそれを、指摘されて初めて思い出した。
何だか苛々していた気がするのも、つまり妬いていたからということなんだろうか。でもあまりしっくりこない。
「……津山くんは、いつもあんな感じだから。今更妬くのも違うっていうか」
彼は常に沢山の女の子に囲まれていた。それが当たり前で日常で、一つ一つ気にしていたらきりがない。自分の身を守るため、傷つかないためにも、私はいつの間にか嫉妬という感情に鈍くなっていたのかもしれなかった。
「西本さん、それまじで言ってる?」
ケースケくんが引きつったような笑みを浮かべる。
「それはさすがに……ちょっと、岬が可哀想」