ピーク・エンド・ラバーズ


心臓がざわついた。頭の芯がすっと冷えて、今しがた言われたことを必死に脳内で咀嚼する。
可哀想って、津山くんが? 私のせいで?


「私もう持ち曲ないんだけどさー、二人はまだ歌いたい?」


凝り固まった空気をほぐす形で、芽依が唐突に投げかけてきた。
咄嗟に声を出すことができなくて、静かに首を振る。


「……俺も、もういいかな。出るか」


ケースケくんの言葉に、誰ともなく立ち上がった。
滞在時間としては二時間弱。これが飲み会の後だったら終電も怪しかったかもしれないけれど、途中で抜けてきたのでその心配はない。

会計を済ませ店外へ出る。その間、私たちの中に会話は生まれなかった。

風の温度が心地良い夜だった。前髪がふわりとさらわれて、片手で押さえると同時に何気なく顔を上げ、瞬間、息を呑む。


「な、んで」


足を止めた私に、隣にいたケースケくんが「ごめん」と種明かしをした。


「岬に聞かれて、俺が言ったんだ。このカラオケにいるって」


彼の言葉は嘘ではないのだろう。
だって、目の前にはついさっき「連絡しないで」と突き放したはずの津山くんが、まるで私たちが出てくるのを待ちわびていたかのように、佇んでいたから。


「……加夏ちゃん」

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